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JUN-TAKAYAMA.TXT

一九八〇

一九八〇年。小学生どうしで隣町のプラモ屋までチャリで遠出した。たしかヒトラー人形(敬礼ポーズ)付きのメルセデスベンツのプラモデルを探しに行ったのだった。大阪と奈良の境、国鉄関西線の線路脇の道端で、花紀・岡八クローンの酒焼けした土方の男たちが五六人集って、子供の背丈ほどある大きな樽のようなものを囲んで、抑制の効いた発気と合いの手のようなものがあたりに弾けていた。僕たちはただごとならぬ雰囲気に、目一杯の立ちこぎで急接近し樽をそばで覗き込んだ。

樽の中では黒い鶏が物凄い勢いで喧嘩をしていた。軍鶏(シャモ)だった。片方は羽根を飛び散らして嘴で相手に襲いかかり、もう片方は首あたりに、黒い羽根の上からでも分かるほど大量に出血していた。生まれて初めて闘鶏をみるにはあまりにも特等席すぎて、同行したYくんはそのまま脇のドブにゲロを吐いていた。Yくんはボンボンなのでハンカチを持っていた。知らない町、路上にドデカい樽、樽の縁に千円札、土方の熱気、そしてなにより命の危険を感じ全身に生を漲らせた、筋肉質の二羽の軍鶏の抜けた羽根と赤黒い血、鉄の鉤のように鋭い爪。僕は初めて見るシャモの闘鶏にもドン引きしつつ、あまりに都心からディレイのかかりすぎた時代感覚にタイムスリップのような混乱をおぼえた。

一九八〇年。YMO「テクノポリス」、闘鶏。クラフトワーク「人間解体」、闘鶏。ウェルカムトゥプラスチックス、闘鶏。イアンカーティス自決、闘鶏。狂い咲きサンダーロード、闘鶏。

(ニューヒロバ画報 不音通信 vol.12

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